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「こんなところにいるのか?」
「お、その言い方はなんだか分かったな」
「そりゃあ」
「去年見たんだよ。だから今年もいる」
「一応聞くが、どこまで入るんだ?」
「そんな奥じゃないからご心配なく~」
わざと道から外れ、雑草の中を突き進む。
道路の街灯がどうにか届いているがそれもすぐになくなるだろう。
足元を見ずに永夜を信じて前へと進む。
見ていてもただの暗闇で逆に恐怖を感じるのであえて見ない。
「初めて見るかも」
ポツリと、会話をしようと思ったわけでもないが、そんな風に呟いた。
「そうなん?」
それを当然のように彼は拾う。
「見ようと思ったこともない」
「まあ、確かに。らしいっちゃらしいけど」
「なんだよ、らしいって」
「だって、かなた。完全なインドア派じゃん」
普段の自分を想像して、確かにその通りなので返す言葉もない。
「オレが誘わないと、部屋で本読んでるか、料理してるか、掃除してるかでしょ?」
「いいだろ、別に。やりたくてやってるんだ」
「まあ、問題はないけどさ。たまにはいいじゃん」
「俺はお前は出かけすぎだと思うけど」
「つまり?」
「たまには、家事をやれ」
「ははは、気が向いたらね~」
「ったく」
「あ、かなた。し~っ!」
急に黙れと言われて思わず立ち止まる。
気がつけばあたりはシーンとしていて、車の音などの雑音が聞こえない。
しかし、耳を澄ませば水音が聞こえる。
近くに小さな川があるらしい。
「かなた」
小さな声で名前を呼ばれ、彼に視線を向けると小さく手招きしている。
僕が動き出したのを確認すると、彼はその場にしゃがみこんだ。