さくらの便り 26
「失礼いたします。お水お取り換えいたします」
と、そこへ先ほど水を頼んだウェイターが帰ってくる。
丁寧に、グラスごと水を3人分換えてゆく。
「あ、お兄さん。オレ、チョコレートパフェ追加~」
「はい、畏まりました。他に何かございますか?」
「コーヒーをホットで」
クギのどこか無礼な追加注文でもお兄さんは爽やかな笑顔で答える。
もちろん、シンの無愛想な言葉にも彼は畏まりましたと言うだけだ。
時給いくらだろ?とかくだらない事を考えていると、お兄さんと目があった。
「あっと、おれは大丈夫です」
気恥ずかしさで緩む頬を抑えながら、断りを入れた。
おれの財布にはそんな余裕は存在しない。
そんなおれにお兄さんが軽く微笑む。
「カッコイイねー、あの人。オレもここでバイトしたい」
一瞬自分の思考が駄々漏れなのかと驚いたが、そんなことはない。
「つーか、お前があんな風に働いてる姿が想像つかない」
クギの言葉にシンの少しばかり冷たい言葉。
「あらやだ。失礼しちゃうわ。オレってば、どこ行っても結構な戦力なんだけど」
「へぇー」
「何、そのまるで信じてません的な反応」
「ん~、おれは何か分かる。クギってどこ行ってもやってけそう」
「なんかニュアンスの違いが感じ取れるのは気のせいかい?ソウくん」
そのまましばらくクギのバイト話が続き
やってきたウェイターにアルバイト募集をしているかどうかを尋ねた事は言うまでもない。
もちろん、そのまま内容のない会話続け長く居座ってしまったことも。
END
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