「物足りない。」
「何が?」
「どうせなら、もっと怖いやつにしようよ。これじゃ、なんか妖精さんレベルじゃん。」
「何だよ、その妖精さんレベルって。」
「全然怖くない、なんかおとぎ話ちっくな話って事。」
最初に話を聞いた時の彼の言葉は、そんな妙な意見だった。
けれど、話の半分以上は彼が原因で出来上がっている。
「へぇ、じゃあ聞くけどこの話の出来事は、どこの誰が原因だ?」
満月の晩にカーテンを閉めるのも、壊れたレコードもみんな彼がやったことだ。
そんな風に聞いてみても彼はどこ吹く風で、まるで気にしていない。
壊れたレコードは、元々この屋敷にあったものだ。それを彼が直して音が鳴るようにしたのはいいものの、やはり完璧ではなかった。
しかし、彼はその壊れ具合が気に入り、気が向くとレコードを回していた。
「あ、じゃあ、オレがもっと違う事すればいいのか」
名案だとばかりに彼は言うが、そんな事されてはこちらが迷惑だ。
「これ以上、変な話広めてみろ、追い出すぞ?」
「ははは。冗談だって、かなた。目がマジだぞ。そんなことしないから安心しろって。」
「お前の場合、普通の行動してても怪しいからな。もう諦めてるよ。」
「え?それって、どういう意味よ?」
「そのまんまだよ。永夜。俺は、お前の行動が迷惑極まりない。」
「うわぁ、ひどい言われよう。」
ふざけて落ち込んだ振りをする永夜。しかし、それも一瞬で彼の頭はすぐに切り替わる。
「そうだ、かなた。忘れるとこだった。」
「何を?」
「Happy birthday!!」
パン!
彼の声と同時にクラッカーの音。
「誕生日はやっぱり誕生日でしょ?」
「やっぱり、お前は存在そのものが迷惑だ・・・」
呆れ返っている僕に反して永夜は満面の笑みを浮かべている。
「だけど、安心しろ。後悔は一度もしてない。何だかんだ言ってるけどな。」
「へぇ~。そりゃあ良かった。オレも、その言葉を聞けて一安心だよ。どうぞ、今後とも末永くヨロシク。」
軽いウィンクと共に片手を差し出す姿はなんとなく見覚えのあるものだった。
「こちらこそ」
僕はその手を軽く握った。
『町外れにある古びた洋館に、二人の少年の幽霊が住んでいる。彼らはいつの間にかそこに住んでいて、いつのまにか短い階段話が出来上がっていた。どこの誰が言い始めたかは分からないが、特に悪い話はないので、誰も大して気にしてはいなかった。そんな話に、もう少し不思議な出来事が加わるのは、もっと月日が経ってからの事。』
end.
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