気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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『かなた、誕生日おめでとう。
仕事を理由に家に帰ることが少なく、会うことすら減ってしまい父親失格だと思い、こんなものを用意してみた。決して母さんに言われたからではないぞ?
父さんが二十歳の誕生日に貰ったのが、名前の入った万年筆だった。お前にはまだ早いかもしれないが、他に思いつくものがなかったんだ。
夕食を一緒に食べたいと言い出したのは実は、祖父さんなんだ。絶対に言うなと言われたけど、お前が、嫌われてると思い込んでると母さんから聞いたから。
だから、ひとつだけ言っておく。
祖父さんはお前の事を嫌ってなんかいない。息子が言ってるんだ。間違いないぞ。
満足に会話もしたことが無いかもしれないが、それは父さんも一緒だ。もっと大人になれば、きっとあの人の良さが分かるだろう。
父さんも最近やっとあの人が分かるようになったんだ。』
見えていなかったもの。気づいていなかったもの。自分が知っていたのはほんの小さな世界にすぎない。
いつも困ったような笑顔を浮かべていた父さんが甦る。固定されていた記憶とは違う父さんの記憶。
『もう一つプレゼントがある。それが、この家だ。
見かけは古いが直せば立派な家になるだろう。ずっと前に一度だけお前に聞いたんだ。
「何か欲しいものは?」と。そしたら、お前はこう答えた。「ママのために、大きなお城がほしい!」って。覚えてるか?覚えてるわけ無いか。父さんはそれをずっと覚えてた。だから、お前と母さんのために用意してみた。今の父さんにはこれしかできない。何もお前の事を知らない父さんを許して欲しい。これから、たくさん会話をするために、書庫には好きな本を用意した。どれか一つでもお前の好みのもがみつかればいい。それについて語り合えればいい。人生まだまだこれからだ。お前の話しを一つでも多く聞く事ができれば、それで父さんの人生に悔いは残らない。
だから、かなた。
これからもよろしく。
父より』
変な手紙だ。きっと、会社の書類しか書いた事ないんだろう。
この手紙をいつどこで、どのタイミングで渡す予定でいたのだろうか?
こみ上げてくるもの必死で抑える。
呼吸すらもままならないこの感情を何と呼べばいい?


「泣いてもいいじゃない?」
忘れていた存在を思い出す。
「永夜・・・?」
「何さ?」
名を呼んだ理由なんてない。
「泣きたければ、泣けばいいよ。我慢する必要ないと思うけど?」
「・・・別に泣きたくなんか・・・。」
言葉を紡ぐ事にも抵抗を感じる。抑えきれないのは、何か大きな塊。
「否定できる?できないでしょ?お前が、そんな顔をする理由わかった気がする。」
「何?」
「ずっと、我慢してきたんでしょ?泣くの。何でかしらないけど・・・。でもさ、人間が泣くのってすごい意味があるんだよ。だから、無理やり押さえ込んじゃダメなんだ。」
全てを分かったような語り口。
「何も知らないくせに、お前に何が分かるんだ。」
何をそんなに知っている?
「言ったじゃん。何も知らないし、分からないって。生憎、オレはそこまで万能じゃないからね。でも、お前も泣けない人間の気持ちなんて分からないだろう?」
「・・・・泣け・・ない?」
「そう。泣かないんじゃなくて、泣けないの。オレの場合。」
どこか、ふざけた喋り方。内容は、今までにない深刻さなのに、彼はいつも誤魔化そうとする。
「何で?」
「契約の代償。永遠の命の代償にオレは涙を失くした。」
静かに語る彼の横顔は無表情。何を考えているのかなんてまったく読めない。それどこか、彼は感情をどこかに置いてきてしまったような声で、言葉を紡ぐ。
「どうって事ないって思うだろう?オレも最初は思ってた。でも、そうじゃないんだ。そんな事なかった。涙を流す事で、人は色んなものを洗い流すんだよ。汚れてしまったり、乾いてしまった、そして霞んでしまった心を綺麗にするために。」
「・・・・・・。」
僕はただ黙って彼の話を聞く。彼に言うべき言葉が見つからない。そして、声を出してしまえば、今まで閉じ込めていたもの全てが出てきてしまう気がしたから。
「だから、泣く事ができるなら、泣いたほうがいい。オレがいない方がいいなら、移動するし。」
「・・・・・・・。」
「かなた?」
「泣けって言われて、泣けるかよ。人間、そんな簡単なもんじゃないだろ?泣き方なんて、もう忘れた。僕は、あの日もう二度と泣かないと誓ったんだ。」
冷静さを忘れた頭は、必要のない言葉まで足してしまう。
「誓った?」
こうなってきたら、もう後は勢いに任せるしかない。
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