「そうそう、眉間に皺寄せちゃってさ。」
永夜が、自分の眉間に指を押し当て、笑ったような怒った様な変な表情で聞いてくる。
それが、どうして痛いに繋がるのだろうか?
「それは、お前の話しが理解できないからだ。」
「そう?オレのせい?」
少し、おちゃらけた感じに、肩を竦めてみせる永夜に、僕は多少のむかつきを覚える。
どうして、こいつはこんなにも明るく振る舞えるのだろう。
表情豊かで、感情がしっかりと表現できて…。
何も、こいつだけじゃない。
クラスにいる連中も。
なんだってあんな、ころころと表情を変えることが出来るのだろう?
僕にはわからない。
僕の感情は作りものだから。
楽しいって何?
嬉しいってどんな感じ?
悲しいと涙がでるものだと誰が決めた?
僕は、何を感じてる?
さっぱり、分からない。
無くしたモノはたくさんある。
それこそ、数え切れないほど。
もう、何を無くしたか分からないほど、色々なものを失った。
それも、みんな…最初から無かったものだと思えば気にならない。
今の僕には必要無いんだ。
ただ一つ。
昔から、無くしたかったのに、なくならない物がココロの中にあった。
ココロの中にあるのは。
黒いモヤモヤとした感情。
気を緩めるとすぐに零れてしまいそうで、僕はそれを必死で抑える。
真っ黒な感情は、外へ出してはいけない。
だから、僕は…?
全てを隠して偽った…?
「かなたさ、何でそんなに、押さえ込もうとするんだ?」
「な…何の話だ?」
「何のって、分かってるんだろう?」
僕の心を読んだような、台詞。どうしてそんな言葉がすっと出てくる?
「お前に、何が分かる?」
主語のない会話にイライラしてくる。
コイツは何を知っている?
何故、そんな分かったような表情をしているんだ?
「何も…分からなくは無いと思うよ。全部は分からない。けど、一応これでも、人生経験は豊富なんでね。かなた。お前は何のために、生きようとしたんだ?何のためにオレと契約したんだ?」
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