気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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高校に入っての初めての文化祭。
前日まではどうなるかなんて、まったく想像がつかなかった。けれど、始まってみれば意外にもとんとん拍子に事が進んでゆく。
そんな訳で、長いようで短い三日間は無事に終了した。
無事と言っても、一日日はコンロが使えないとか、材料が足らないかもしれないとか、売り上げが合わない、とかいった必然的なアクシデントがあったし。
二日目は二日目でまったく違ってくる、一般客にいちゃもんつけられたり、頭の悪い生徒が客にケンカ売ったり、買ったりといった小さなパニックはもちろん色々あった。
担任の話しでは、飲食関連の店の中では売上トップらしい。他にも、色々なランキングでも上位総なめ間違いなしだそうだ。まだ、アンケートすら取っていないのに結果が見えているなんておかしな話だ。
でもまあ、終わりよければ全て良しとも言うし。精一杯やったんだ、こんなもんだろう。
けれど、僕は肝心な事が解決できないでいた。
永夜が捕まらなかったのだ。会わなかったわけではない。むしろ、毎日顔を合わせていたし会話もした。だが、少し込み入った話をするほどの余裕がなかったのだ。理由はお互いにあった。
一日目、二日目は僕の方が忙しく、他の生徒が帰った後も色々とやらなければならない事がたくさんあって、彼と話をするどころではなかったのだ。
最終日の放課後になってから捕まえようと思っていたら、着替えている間に逃げられてしまっていた。どうしてなのかはわからない。逃げられたという表現も間違っているのかもしれないが。
そして、今日は片付けの日。
昨日までの盛り上がりはどこへいったのか?
姿形は、いつもとは真逆に派手に飾りつけられていると言うのに、言いようの無い寂しさが漂っている。
まるで、生徒たちに忘れられてしまったように寂しさの漂う学校は、どこか時が止まっているようだった。
生徒たちは生徒たちで、一大イベントが終わってしまい、これから何を楽しみにすればいいのか?という憂鬱感。そして、昨日までのお祭り騒ぎが抜けずに普段よりは若干テンションが高くなっている。そんな、二つの感情に挟まれて、戸惑うような雰囲気を全体にかもし出している。しかも、すぐ後には期末テストが控えているのだから先の事を益々考えるのが恐ろしい。
そんな、雰囲気はもちろん、例外なく僕のクラスにも漂っている。しかし、一名のサボりが出たため、少し違う感情も混じっていた。
片付けは皆で責任を持ってやるものだろう?
「ちょっと、何でアイツ来ないの?」
「そうだよ、一ノ瀬、何か聞いてないのか?」
「俺に聞くな。知るかよ。」
あからさまに、不機嫌な声で短く答える。
教室を掃除しながら、今日何度目かの会話を繰りかえす。
そう、あの野郎、サボりやがった。


後ろではそんな会話を聞いた数人の生徒たちが声を小さくして喋っている。
「わぁお、かなたが怒ってる…。どうするよ?」
「おれに振るな、永夜はどうしたんだ?」
「だれか、一ノ瀬の機嫌直せるやついないのかよ。」
「無理だろ?普段大人しいやつがキレると、何するか分かんないって言うし。」
こいつら、わざとやってんのか?会話の殆どが筒抜けだ。
「ホントめずらしいな。あそこまで不機嫌丸出しな一ノ瀬、始めて見た。」
「だな。」
ここまで、ごちゃごちゃ言われる筋合いはない。そもそも、そんな会話を無視できるほど、今の僕に余裕はない。
「悪いけど、ちょっとどいてもらっていい?」
そう言いながら僕はほうきをわざとらしく構える。
話し掛けられた彼らは、急な事に驚き硬直している。
そして、一呼吸待って再び喋りだす。
「あー、別にどかなくてもいいよ。つーか、今が何の時間か知ってんの?友達と仲良くお喋りする時間、とか思ってるわけ?」
「えっ?」
「一ノ瀬、いや、あの…。」
「で?どくのか?どかないのか?」
戸惑い始める彼らに、さらに追い討ちをかける。この頃にはクラス中は静まり返っていた。
「お前ら、煩いんだよ。ごちゃごちゃ言ってないで、手動かせ。それが出来ないならここから出てけ。つーか、俺の視界に入るな。今すぐ消えろ。」
たいして感情を込めずにしゃべる。考えないで喋っているから内容が怪しいが、言われた彼らは、そんなことを考える余裕がないようだ。
しかし、そんなに僕が怒りをあらわにしているのが珍しいのだろうか?
すっかり空気が変わってしまっている。
わかってる。ようは、八つ当たりだ。
こいつらには何の罪もない。
そう理解したとたん、全てのやる気を失った。
「悪い。俺、パス。」
そう言いながら、持っていたほうきを床に投げ出し、教室を去ろうと歩き出す。
カタン・・・とほうきが床に落ちる音が響く。
直前までペラペラと喋っていた連中は、何が起きたか分からないとでもいう様にぽかんとしている。
「あっ、いや、ちょっと待て!一ノ瀬!」
「わ、悪かったって、おい、どこ行くんだよ。」
「かなた!相棒が居ないからってそんな…」
そんな台詞を無視して廊下に出る。訳が分からないというように、クラスメイト達に叫ばれるが、もうどうでもいい。
ところが廊下に出たところで何も知らない人間に声をかけられた。
「あれ?一ノ瀬クン、どこ行くの?」
もう、この女子生徒の名前を思い出すのすらめんどくさいと感じるが、このまま無言で立ち去るのは、後始末が大変になる。ここらで適当なことを言ってカバーしておかなければならない。
「あ~。悪い。気分悪いから保健室行ってくる。」
もっともらしいウソをついて、返事を待たずにさっさと歩きだす。後ろからは大丈夫?と大きな声で叫ぶ女子の声が聞こえてきた。
さて、どうしたらいいのだろう?


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