さくらの便り 15
Side Shin
「あの桜を見て昔あった事件を思い出したんだ」
「事件?」
俺の言葉を聞いて反応を返すのはクギのみでソウはただじっと俺を見ているだけ。
もう一人はうつむいて話を聞いている。
「人の血を奪いし生ける花。そんな言葉と共に有名になった桜の木を覚えているか?」
「いや」
「昔といっても俺らが小学校上がる頃か」
確かに自分は小さかったがそれでも良く覚えている。
当時、桜が好きだと言う幼馴染と一緒に―というよりは無理やり連れて行かれて―子どもの足で行ける範囲の桜を見に行っていた。
時にはバスに乗ってほんの少しだけ遠くへ行ったこともある。
その中でも、その桜の木は印象に残っていた。
たった1本しかないのに、確かな存在感。
たまたまいた近所の人の話では100年以上も前のものだという。
それまでに見たどの桜よりも生命感に溢れており幼いながらにも感動し、そして怖いと感じたのを今でもよく覚えている。
近所に住んでいると言った、その男は桜に纏わる話をしてくれた。
桜がどうしてあんなに美しいか知ってるかい?桜はね、人の血を吸って美しく咲くんだ。
そんな言葉から始まった男の話。
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以下注釈
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