気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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弐。

盆の準備のようなものかと問うたら少し違うと返された。
そもそもはもっと頻繁に開かれていたらしい。しかし、最近ではお盆の前にまとめて開くようになったのだとか。
仏教の話は難しいからと前置きをした割には、随分とあっさりとした説明しかしてくれなかった。
帰ったら何か本を探そう。
断続的に聞こえていた音が消え、人々が動く気配がする。
ざわざわと、思ったよりもたくさんの人が出てきた。
皆、手に塔婆を持っている。
部屋の中を覗くとたくさんの塔婆の前をウロウロとしている人が何人かいた。
自分が持っていくべきものがみつからないらしい。
塔婆には、故人の名が記されたものもあれば、よくわからない漢字だけが書かれたものもある。
中には紙がはりつけてあり、束になっているものもあった。
「お、坊主。今年も来たのか?」
そんな声が聞こえ、思わず周りをきょきょろと見回す。
案の定、話し掛けられたのは永夜だ。
「あれ?爺さんまだ生きてたの?」
見るからに、頑固そうな老人に向かって、永夜はとんでもない暴言を吐く。
「はは、言ってくれるな坊主。お前の方こそ、ちっとも成長してないじゃないか?」
「うわ~、それ言われると痛いな~。でも、身長が伸びないのはオレのせいじゃなし」
頭をぽんぽんと叩かれる永夜を眺めながら、僕は二人の関係を考えた。
が、分かるはずもない。
「ところで、見つけたのか?」
「ううん。まだこれから。爺さんは?」
「わしもまだこれからだ。」
「あれ?部屋の中に居たんじゃなかったの?」
「いたんだが、今の今まで隣と話しこんでおった」
「うわぁ~バチ当たりな事する人だなぁ」
「お前さんが信仰深すぎるだけじゃなにのか?今どきの若いもんがこんな事に興味があるなんて聞いたこともないぞ?特にお前さんみたいに、こんなちゃらちゃらしたもんが」
そう言いながら、老人は色素の薄い、黒髪とは程遠い永夜の髪をかき混ぜる。
「だから、オレのは地毛だっての。あんたんとトコのお孫さんと一緒にしないでよ」
「あはは、そいつは悪かった。ところで、お前さん。今年は中にいなかったのかい?」
「ああ、今年は連れがいたから」
永夜がこちらを指差すと、老人は僕の存在に初めて気づく。


とりあえず僕は、目があったことを確認してから頭を下げた。
二人に近づく気は微塵もない。
「友達かい?」
「うん。そう。去年言わなかったっけ?」
「さあな。そんな昔の話は記憶にないよ」
「50年以上も前の事は嬉々として語るのに?」
永夜の言葉に老人は大きな声で笑う。
二人の会話を聞いている限りでは、昨日今日に出会った中ではなさそうだ。
しかし、そんな事はありえるのだろうか?
その後もしばらく、爽快なテンポで会話をしていた二人だが、僕が会話に加わる気がないと気づいたらしい永夜が会話を切り上げる。
僕にちらりと視線を送ってから、声のトーンを下げて老人に何か言う。
「それじゃあ、爺さん。また来年。オレ、このままじゃ連れに愛想着かされそうだから行くわ」
「ああ、また来年か・・・」
「何、もう来る予定ない?」
「残念ながら、来る予定だ」
「じゃあ、いいじゃん」
「ああ、友達は大事にしろよ」
「分かってる。バイバイ!」
老人に手を振ってから、塔婆が並んでる場所に駆け足で向かい、すぐに何本か持って帰ってきた。
その間に老人は違う人間に捕まって再び話し込んでいる。
「いい人だろ?あの人」
「ああ」
「多分気づいてる」
「何に?」
「オレらの事」
ドキリと心臓が跳ね上がる。
「でも、気づいてない振りしてくれてた。だから、オレも何もしてない」
そんなもんなのだろうか?
「多分、今年が最後だ」
「何が?」
なんとなく予想はついたが、聞かずにはいられなかった。
「あの人に会えるの」
なんでもない事のようにすらりと彼は言う。

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