気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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こうなってきたら、もう後は勢いに任せるしかない。
「そうだ。誓ったんだ。」
永夜の顔よりもやや上に視線を固定し、一つ息を飲み込む。
「母さんが・・・、悲しそうな顔をしたから。僕が泣いたのを見て、凄い悲しそうな顔をしたんだ。だから、泣いちゃいけないと思った。」
視線を下げ、床を見つめる。
「それで・・・泣いてる場合じゃないって思ったんだ。母さんには、いつも笑っててほしかったんだ。父さんが、母さんをいつも悲しませてたから、僕と居るときは、いつも笑っていてほしかったんだ。」
「うん。」
「だから・・・。」
言葉が続かない。
「だから・・・母さんの前では泣かないって決めたんだ。笑うのはあまり得意じゃないから・・・」
何を言おうとしていたのかもわからない。
「せめて、泣かないでいよう・・・って」
「うん。だったらさ、もう良いんじゃないの?」
軽い口調で、何でもないように、彼は僕に救いの言葉を投げかける。
彼の言葉に僕は思わず視線を上げた。
永夜はしっかりと僕と視線を合わせるとそのまま話し出す。
「もう、終わりにしよう。何も、なかった事にしようって言ってるわけじゃないんだ。ただ、そろそろ気持ちを切り替えてもいいじゃないの?」
僕は黙って彼の顔を見続ける。
「ほら、ちょうど色々キリが良いし。」
あくまでも軽い冗談のように話す。少し、恥ずかしそうな笑みを浮かべて。
涙が溢れ、止まることなく流れてゆく。
視界が滲み、今まで見えていた彼の顔すらもわからない。しかし、なんとなく見えていたのは困ったような笑顔を浮かべた顔。あまり見ない表情だった。
何をするでもなく、永夜はずっと僕の横に立っていた。
僕は顔を上げることなく泣き続けた。泣き方なんて忘れていたと思っていたのに、涙は次から次へとあふれ出す。
一度壊れたものは直す事はできない。
今まで、壁を作って守ってきたものが、あふれ出す涙で壊れてゆく。
泣き続ける僕に対して彼はどう思っていたのか分からない。
ただ、何か子守唄のようなものを口ずさんでいたのは彼なりの優しさなのかもしれない。


「決めた・・・。」
「え?」
どれくらい経った頃だろうか。窓から入る日が傾きかけて、絨毯に僕らの影を描いていた。
立ち上がり、なんとなく視線を合わせないようにして、まだ涙声の第一声を放った。
「決めた、永夜。俺、ここに住む。」
「・・・・・・・。」
永夜は驚いたのか呆れたのか、声も出さない。
「何だよ?その反応は」
「いや、別に。意外・・・ってわけでも無いけど、なんかビックリした。こんなお化け屋敷に住むのか?お前が?」
一番の問題はそれだ。建物自体の傷みはそんなにない。しかし、庭やその他荒れ放題の室内はどうにかしなければ、とてもじゃないが住める状態ではない。
「何か、むかつく言い方だな、それ。とりあえず、庭だけでも業者に頼む。部屋は、使えそうな部屋探して・・・何も全部の部屋使うわけじゃないし。1個ずつ片付けていけばいいだろ」
「今のマンションどうするつもりだよ?」
「・・・欲しきゃやるよ。」
どうにも、永夜がお前には無理だと言っているような気がしてならない。だから、嫌味のつもりで軽い気持ちで言った。
「・・・・いらねぇ。」
けれど、その一言がなんとなく空気をおかしな方向に持っていく。
「・・・・じゃあ、片付けて賃貸に出す。結構いい条件だから、それなりの値段で貸せるだろ。」
「なんか、さすが社長の息子さんだな。考える事が違うよ。」
「・・・・お前はどうするんだ。永夜」
「ん~。どうしよっか。またどっか行こうかなぁ・・・。」
「どっかって?」
「国内でもいいし、アメリカ方面でもいいや。」
そういえば、彼が京都に行きたいと言っていたことを思い出す。
「アメリカって、パスポートは?」
「そんなのいくらでも、どうにでもなるよ。」
「なるのか?」
「うん。」
言葉が出ない。たった一言で事は解決するはずなのに、その言葉が出てこない。
どちらからというわけでもなくその場を動く。
目的はもちろん、屋敷内の散策だ。
「部屋だらけだな。」
「そうだな。」
歩きながらも、さきほどの後悔が付きまとう。
「こんな部屋数あって、どうするつもりだったんだろうな?」
「そうだな。」
「・・・民宿でもやるつもりだったのかな?」
「そうだな。」
「・・・・。明日も晴れだな。」
「そうだな。」
「・・・一つぐらい、オレが使っても問題ないよな?」
「そうだな・・・って。え?何言った?」
「お前が、何やら考え耽ってるのがいけないんだ。あ、あったぞ。ここが書庫だ」
何やらいらぬ事を考えている間に一つのことが決定したらしい。
この先ずっとこのままだという保障はないが、少しでも明るい未来が見えるならそれを信じてみてもいいと思う。
ここまで、導いてくれてくれた天崎永夜という人間を。

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