人なんてものは、結局のところ行き当たりばったりで気まぐれだ。
なんとなく、気が向いて家から一番遠いコンビニまで来てみたら、店を出る頃には時刻はすでに日付が変わるところだった。
ふっと見上げた空は満点の星空だった。空気が冷たいので、夏よりも星が良く見える。そして、ひっそりと満月が浮かんでいた。
「へぇー…。」
やはり、外に出てみて正解だったのかもしれない。
コンビニの袋を片手に提げながら、綺麗な空を見上げ、僕はのんびりと歩く。最初に感じた寒さは、今はまったく気にならない。
空を見上げながら、コンビニ袋片手に制服姿で歩く高校生。
自分で自分の姿を思い浮かべる。
「相当、マヌケだよな。」
思わず笑いがこみ上げてくる。
「つーか、それじゃ、ただの不審者だろ。」
一瞬、何の事だかわからなかった。
その台詞が、自分に向けられた物だと気づくのにしばしかかる。視線を空から声のする方へと向ける。
・・・・・・・。
何だ?
影になっていてハッキリとは見えない。しかし、その声は普段から聞きなれているものだ。
けれど、今はそれどころじゃない。
彼の持っている物を目に止め、思わず再び空を見上げた。そこには、先ほどとかわらない星たちが輝いている。
「…。不審者はお前だろう?」
「え~。オレのどこら辺が不審者だっての?」
まるで、自覚がないらしい。
彼は、片手に傘を持っていた。
持っているだけなら良かったのだが、その傘はしっかりと彼の頭の上で開いている。
「何やってんだよ?こんなところで。」
「ん~。散歩?」
何で疑問系なのだろう?
「かなたこそ、こんな時間に何やってんだよ?そんなカッコで、補導されっぞ。」
「見てわかんないのか?買い物帰りだ。お前じゃないから、そんな事にはならないよ。」
しかし、永夜に言われて初めて気がついた。確かに、こんな時間に制服でうろうろしていたら補導の対象になる。
「で。何でお前は、傘なんてさしてるんだ?」
雨も降っていないのに真っ黒な傘をさす姿は、とても滑稽に見えた。しかも、彼も制服姿だ。
「あ~あ。これね。何でだと思う?」
僕が答えられるはずがない。なんだってそんなこと訊いてくるんだ?
そんなの知るかよ。
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