後編
「おかしいな・・・。」
そう呟くと、もう一度少年は覗き穴に目を合わせる。
「やっぱり、見えない。」
と彼はそう呟く。
どうやら、覗き穴の「向こう」が見えないらしい。
そんな事をしているうちに、いつの間にか、床に置かれていた目覚し時計が12時丁度を指す。
カチリ。
少し大きな音がして、それが合図だったようにいつもの「それ」がやって来た。
コンコンコン・・・。
と、1拍休んで再び音がする。
コンコンコン・・・。
真っ暗なのだ。
普段はまったっく使わないから分からないが、汚れているという訳ではないだろう。
いつもの「やつ」は、この扉1枚隔てた向こう側にいる。
だったら、扉を開けばいいだけの事だ。
現に今だって音は鳴り続けている。
向こう側に「やつ」がいるということだ。
しかし、それができない。
出来る事なら、「何が」いるのか確認してから、扉を開きたい。
いきなり開くのは、いくらなんでも怖すぎる。
こんな、意味もなく毎日いたずらをしに来る奴なんて、きっと頭がおかしいに決まってる。
だから、まずはこちらで姿を確認したいのだ。
もう一度、覗き穴に目を合わせる。
「・・・・・・」
少年は3度目の正直と言わんばかりに、もう一度覗き穴に目を合わせている。
そして、そのまま数秒。
無言のまま、「向こう側」を見ている。
扉の向こうにはまだ「それ」はいるらしく、まだ扉を叩く音は鳴り止まない。
やはり、何も見えない。
真っ暗だ。
いや、真っ暗というよりは、真っ黒だ。
これはいったいどうゆう事だ?
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