さくらの便り 25
「で?なんであの写真?」
半分ほど食べ終えたところで、クギが会話をスタートさせる。
なんとなく、3人が3人とも話しだすタイミングを見ていたように感じだった。
「趣味なんだと」
「趣味?」
シンが出した言葉は意外というか、あっさりとした答えすぎてどこか納得いかない。
「あの他にもいろいろな場所で桜の写真を撮っていたらしい。
その中で彼が気に入ったのがあの写真…というより、あの桜か」
「なんか期待外れ」
「無意味な期待するなよ。ハガキに加工したのはなんとなくだそうだ」
クギの言葉にシンが冷たく返し、一応という付け足しをする。
「消印がバラバラだったのは、あの人の勤務内容が外回りだから」
全員に沈黙が落ちる。
なにをするでもなく黙り込んだのはほんの短い時間で、すぐにクギが食事を再開させた。
シンがそれに一瞬だけ視線をやり、小さなため息をつく。
「期待外れか?」
さきほどのクギの言葉を今度はシンがおれに向かって疑問形で発する。
「んん。期待外れってか、確かになんか拍子ぬけしたみたいなとこはあるけど」
グラスを手に取り、飲もうとしたところでそれがもう空な事に気が付いてテーブルに戻す。
「あ、サンキュ」
シンが自然な動作で、おれの前に自分の水を差しだす。
氷が溶けていくらか量が増えているそれは一度も口をつけていないことが伺えた。
「あ、スミマセン。お水貰えますか?」
おれが水を飲んでる間にシンが近くを通ったウェイターを捉まえる。
彼は畏まりましたと頭を下げてからすぐに来た道を引き返していった。
「けど?」
そして、何もなかったかのように会話を再開させる。
さすが、としか言いようのないシンの行動。
「けど、それでよかった」
おれの言葉に、シンは言葉にこそ出さないが不思議そうな顔をする。
「何か特別な理由とかがあった方が、なんていうか困った?ん~。嫌だったっていうのかな?」
上手く言葉が思いつかずに、自身でも首を傾げながらも思ったことを説明してゆく。
「ともかく良かったんだよ。これで」
「ま、お前らしいかな」
結局は何の説明にもなっていない。
それでもシンは笑ってそれを認めてくれた。
クギも横で頷いている。
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