壁に掛けてある時計を見上げ、ふと疑問に思ったことを理事長に尋ねる。
「あの時計は正確か?」
「この部屋は正常だよ」
「アキ、行こう」
この建物の異常さから、時計まで狂ってしまっているのではないかと思い質問したのだが、彼の答えは大きく含みのあるものだった。
それを汲み取ろうと、言葉の意味を考えているところにシュタから声がかかった。
見ると、同じように席から立ち移動する彼は懐中時計を片手に持っている。
「理事、4時間後にまた来る。それまでの準備をよろしく」
「4時間もなにするんだ?シュタルク?」
すでにドアノブに手を掛けているシュタにレイスが尋ねるが彼は答えない。
「1時間で準備、3時間仮眠」
仕方なく彼らに近づきながら、大体の予定を言葉にした。
この時間設定は、前に自分が言ったことだ。たぶん彼はそれを覚えていたのだろう。
「なるほどね」
シュタを先頭に部屋から出ていく、わざと一案最後につき途中振り返って、口元だけに笑みを浮かべた。
「ああ、理事。言っておくが俺の今の依頼人はシュタだ。あんたではない。報告はするがそれが全てだとは限らない」
そして、理事長とスグリにゆっくりと頭を下げた。
途中、唖然とした顔の理事長が視界に入ったが俺は気にせず部屋を後にした。
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