さくらの便り 6
「そうだ、シン!届けよう、坊さんとかだれかしらいるだろ?
いなかったら交番とか!」
「交番に届けても、むこうも迷惑だろ」
迷惑って…あの人たちはそれが仕事じゃないのか?
声には出さずに己の中だけツッコミを入れる。
それと同時に何歩か下がってシンから距離を取った。
なるべく傍にはいたくないし、中身も見たくはない。
「あれ?」
「お、だれか来たぞ」
シンが不思議そうな声を出すのとクギが楽しそうな声を出すのはほぼ同時だった。
シンが骨壷の中に手を入れているのを横目に、だれが来たのかを確かめる。
自分たちがやってきたのと同じ方向に人影。
「ここの住職さんかな?」
「何をのんきに、まずいだろ。どう考えてもまずいだろ!この状況!」
「なんで?」
「だって、おれ達見ようによっちゃ墓荒らしだよ」
「あれは弟坊主」
「「へ?」」
俺の真剣な声をまったく無視したシンの声。
なんだって?
「あれは、住職の弟さん。ソウ、ほら」
「な、なに?」
シンの手の中には一枚の紙切れ。
それを受取ろうとしたところに、思ったよりも近くから声がかけられる。
「何やってるんだ?お前たち」
「わー、すみません。おれ達べつになにもしてませ…ん?」
不自然に上がる語尾。
慌てて頭を下げた俺だったが目の前にいる人物を見て思考回路は完全に停止した。
「何だ?それは?」
そう尋ねる声の主。
来ている服装はまさにお坊さんといった感じだが、何かがおかしい。
自分の知っているお坊さんはこんなではない。
というより、この人はお坊さんであっているのだろうか?
頭上でビシリとセットされた髪を見ながらおれは思う。
金髪オールバックな坊主は初めて見た。
しかも
両耳にはピアスがこれでもかと付いており
激しく着崩した胸元からからはごついアクセが覗いている。
まだ若そうなので20代後半といったところか。
彼は何を目指しているのだろう?
そんな疑問を抱きつつも黙って彼を観察する。
服装と見てくれのミスマッチ感がなんとも落ち着かない。
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