さくらの便り 10
「ソウ、ちょっと来てくれ」
どれくらいの時間が経っていたのかは分からない。
階段に座り込んで
遠い空を眺めながら考えていた。
思い出していたという言葉の方が正しいが
生憎、モトキサユという名には覚えがない。
名を呼ばれ、顔をあげると
そこにはシンが立っている。
「見つけた」
「何を?」
「…お前、寝てた?」
「まさか、そんな」
二人が必死に探しているであろう時に
一人のんきに寝ているなんて。
想像しただけで後が怖い。
「あ、墓?」
「そうだ、馬鹿」
「ですよね」
もう少し考えてから言葉を発しよう。
彼らとつるみ出してから何度も思ったことだ。
何度も思っている時点でまったく実践できていないのだが…。
すたすたと先を行くシンを慌てて追いかける。
十数段の階段を降りると墓が広がっており
それが何度か繰り返されて構成されてる墓地だ。
例えるなら少し広めの段々畑。
「夢と桜と聞いて何か思い出す事は?」
2エリア下がった場所にそれはあった。
本貴家の墓
と書かれた墓を横目に問われるが
それが分かっていれば今現在ここにはいない。
「ソウ、お前記憶喪失とか?」
「いや、そんなことないと思うけど」
「シン、何で急にこの本貴さんなんだ?」
シン一人がすべて分かったような空気。
クギの質問に対しておれも頷きシンに答えを求める。
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