さくらの便り 13
本堂に案内されそのまま床に座り込む。
椅子を出すと言われたがそこまで手間をかけさせるのは申し訳ないのでおれが全力で断った。
お茶だけは喉が渇いていたのもあり有り難く頂いておいたが
茶菓子も出すと言われたが、それはシンがきっぱりと断っている。
そしてその場にはおれ達3人と本貴さんの4人が残された。
和武さんが興味ありそうにしていたが住職に半ば引きずられるように連れて行かれた。
「で?」
と全員で車座になった状態で第一声を発したのはおれ。
もっとマシな言葉を選べばいいのになぜか一文字。
おかげで右側に座るシンに思いっきり馬鹿にした表情をされた。
左に座るクギが小さな声で何か言っていたが
シンが放つ不穏な空気が気になって聞き取ることは出来なかった。
目の前に座る本貴さんはものすごく居辛そうにしている。
「ソウ、本当に覚えていないのか?」
シンが改めてそう切り出した。
おれは目の前の人物をこれでもかと観察してから首を振る。
「私と君はあまり会っていないからね。
私よりも妻の方が記憶にあるだろう」
何度か遊んだこともあるんだが…
最後にそう小さく付け足して俯く本貴さん。
そうは言われても情報が少なすぎる。
本貴という名に覚えも無いし彼自身にも会った覚えがない。
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