さくらの便り 17
「その、幼い子どもたちというのがお前たちだろう?ソウ」
最後まで視線を外すことなく俺を見ていた彼の眼を見ながら問いかけた。
しかし、彼の瞳にはなにも映っていない。
必死に思い出しているのだろう。
「そうだよ」
返事をしたのはソウではない。
声のした右を見れば顔を上げ、ソウと同じように俺を見る男と目があった。
「桜のある広場が彼らの遊び場だったらしく
その日もそこで遊んでいたらしい。
けれど、何を思ったのかうちの咲夢が桜の木の下を掘り出した。
それを蒼くんも手伝って二人で見つけた」
さきほどまでとは態度がだいぶ変わった。
どこか落ち着かない様子でいたが、今聞いた声からはそれが消えている。
しかし、「らしく」とか「らしい」とか曖昧な表現ばかりなのが気になった。
「きっと、俺が話したのと同じものを学校かどこかで聞いたんでしょう。
あのあたりでは有名な話らしい」
「へぇ~、オレは初めて聞いた。
あ、でもその事件は覚えてる。結構近所だったし、親が騒いでたから」
「でも、なんでそんなことがわかったんだい?」
「桜の木の下に骨壷が置いてあるのを見て、
なんとなく思い出したんです。でも、最初はソウとはつながっていませんでした。」
桜と骨。
簡単なインスピレーションだった。
そのなんとも不釣り合いな組み合わせが記憶を呼び起こすなんてごく簡単な事だ。
その事件とソウが繋がったのは
ただ単純に身近に当てはめてみたら偶々ぴったり合ってしまったというだけだ。
極端に骨壷に近づかない彼を見て
どうしてそこまで拒むだろうかと不思議に思ったのがきっかけだ。
確かに見たり触ったりするのは気持ちのいいものではない。
しかし、いくら他人のもので、どこの誰ともわからないものだからといって、
あそこまで嫌悪感を抱くものだろうか?と考え
もしかしてと仮定した。
全ては仮定と想像の繰り返し。
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