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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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その日は夏休みまであと一ヶ月、期末試験まではあと二週間弱で友達の誕生日でもあった。そんな日の、長い昼休みの時間。僕は彼に、お祝いにと缶ジュースを一本おごってやった。
ちなみに、校内にある自販機のため普通よりも安い。それでも彼は嬉しそうにしていた。窓側にある彼の席で、持参した弁当を食べながら、どうでもいい話をダラダラとしていた。話題が切れて、少しの間沈黙がはしる。その時僕は、誕生日について聞いてみようと、ふっと思ったんだ。

今、考えると意味の分からない質問をしたと思う。


教室から、少し離れた所にあるホールで、自販機を眺める彼の後ろ姿はどこか間抜けだった。
「まだ決まんないのかよ?」
「そんなに急ぐなよ。時間はたっぷりあるんだ。」
何をそんなに悩む必要があるのか、僕には理解できなかった。
しようとも思わないし。
「よしっ!決めた。やっぱこれだろう。」
そう言いながら、彼はオレンジジュースのボタンを押す。
「結局いつもと変わらないじゃないか。散々悩んだくせに・・・。」
「いいんだよ。いつもどおりで。」
自動販売機特有の、「ガコン」という音がして、缶が落ちてきた事を知らせる。
取り出し口からジュースを取り出す彼を見届け、僕は教室へと向かう。
すぐに追い付き、横に並んだ彼は、片手で持ったそれを放り投げた。
彼の頭より少し高いところまでいって、落下。そして、彼の手の中へ。そんな動作を何度かしているうちに教室にたどり着く。
そんな仕草を繰り返す彼が、気のせいかとても嬉しそうに見えた。そんな姿を見ていると、もっと良い物をあげれば良かったと少し後悔する。
教室で弁当を広げているのは、三つのグループだけだった。他のクラスメイトは、他所のクラスに行ったり、食堂や屋上とそれぞれのお気に入りの場所へと移動しているのだ。
入学当初は、みんな、先輩たちを怖がって教室で食べていたが、二ヶ月も経てば、度胸も備わるらしい。僕らは、窓側の一番前の席が指定席だった。
「ありがとな。マジ嬉しいかも。」
席に着いて、彼は一番にお礼を言ってきた。
「別に。お礼言われるような事はしてないよ。ジュース一本で、そこまで喜ぶなよ・・・。」
あらたまって言われるとものすごく恥ずかしい。たかだかジュース一本で、ここまで喜んでくれる彼は凄いかもしれない。
「今日、初めてプレゼントもらったよ。」
「ふーん。家族からは?」
「家族?いないよ。オレ、一人暮らししてるって言ってなかったっけ?」
「全然。初めて聞いた。」
「いない」というのはどっちの意味なんだ?一緒に住んでないから「いない」なのか?この世に存在していないから「いない」なのか?
「あれ?言ってなかったっけ?まあ、いっか。そういう事だから、いつでも遊びに来てもいいぜ。誰も文句言うやついないから。」
「あそ。一人暮らしなら俺もしてるよ。」
「あっ、そうなん?へえ。お前が・・・?意外かも・・・。」
「どういう意味だよ?」
「いや、あの・・・。なんか、お前のイメージって、お金持ちのお家のお坊ちゃんっていうイメージがあったから。」
彼は、やたらと「お」をつけてそんな事を言う。
「ふーん。」
あながち、外れてもいないことを言われ、何て答えたらいいのか分からなくなる。
会話が途切れ、しばしの沈黙がはしる。僕の反応を見て、何かまずい事を言ったのかもしれないと、気にしている様子がまるわかりだ。
なんとか他の話題は無いかと、教室中を見まわしている。


なんとか他の話題は無いかと、教室中を見まわしている。
教室にいるのは全部で十人ちょっとだ。けれど、充分過ぎるほど騒がしかった。
そんな中、二人の間の沈黙が嫌で、僕のほうから話題を振ってみる。
「テスト勉強、始めてるか?」
どうって事無い、ごくごく普通の質問だ。
「無い。」
あまりにも、短い答えだった。主語をつけるぐらいして欲しい
「・・・。何が?」。
「いや、だからテスト勉強だろ?まだ、始めてねぇよ。面倒くさい。」
僕らにしてみれば高校に入ってから始めての期末テストだ。
先生方曰く、中間テストは初めてだから、とても簡単に作ってあったそうだ。しかし、期末テストはそうはいかないらしい。

 そろそろ、話題も尽きてきて、お互いに食べることに集中し始める。いつもはこの、沈黙を心地よく感じていた。
しかし、今日は何故だか嫌だった。
だから無理やりにでも話を続けるために、思い切って彼に聞いてみたのだ。僕が常に思っていることを彼はどう思うのか?
「あのさ・・・誕生日ってどう思う?」
「はあ?」
「だから、誕生日ってどう思う?」
「何、急に。どう思うってどうゆう事?…誰もが必ず持ってる年中行事の一つとか。」
「違う。そうゆう意味じゃなくて・・・。なんていうか・・・、俺は嫌いなんだ、誕生日って・・・。」
彼は何が言いたいのか分からないという顔するが、すぐに何か思い浮かんだらしく何故か嬉しそうにしゃべり始める。
「え~っと。もしかして、さりげなく誕生日をアピールしてる?誰にも祝ってもらえないとか、プレゼントをもらえない。ってな事を嘆いてんの?ん?お前の誕生日っていつだっけ?安心しなよ!今年はオレが盛大に祝ってやるから。コイツのお礼も兼ねてね。」
そう言って、笑いながら彼は、飲みかけの缶ジュースを顔の高さまであげて軽く振っている。僕が聞きたいこととはまるで検討はずれな答えばかりを返す彼に、あきれながらも「もっと違う答えは無いか?」と尋ねてゆく。
「じゃなくて・・・。心配しなくてもプレゼントはちゃんと貰ってる、俺が言いたいのは、ただ単純に、誕生日というものが好きか?嫌いか?ってことなんだけど?」
「好きか?嫌いか・・・?」
しばらく考え、彼はあっさりと答える。
「オレは好きだよ、誕生日。だってプレゼントとか貰えるだろ?」
尋ね方を変えて質問してみるが、その度にどこかズレた答えを返される。・・・違うな、彼の答えはズレてはいない、むしろ正論だろう。いかにも彼らしい答えだし。しかし、僕が求めている答えとはまったく違う。どう聞いたら良いかと、うまい言葉を考えていたが、そんな事よりもまずは自分の考えを言うべきだと気がついた。


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