扉の前に立つと、それには強い結界が張ってあることが良くわかる。
「準備しとけ」
後ろにいる二人に簡単に指示を出し、目を閉じ短く深呼吸をしてから手をかける。
パチ
静電気のような小さな刺激が発し、力が反発し合っているのがよくわかる。
別に結界を解こうとしているわけではないので、自分の波長を合わす。
取っ手を握る手に力を入れた。
扉を押しあけ、隙間ができた瞬間、強い威圧感に包まれる。
「ふーん」
思わす漏れた自分の声。
レイスの息を飲む音がやけに近くに聞こえた。
「上等じゃないか」
つぶやき、笑みをこぼす。
残りを勢いよく開いた。
「いってっらしゃい」
なんとも含みのある理事長の声を背に、暗い地下へと続く階段に足を踏み入れた。
ゆっくりと閉まる扉を背に階段を下りて行く。
「アキ、レイスどうする?」
「俺はいらない、慣れてる」
扉が閉まると同時にシュタが訪ねてくる、何が言いたいかなんて考えずともわかるがレイスはそうではないらしい?
返事を返したのは自分だけでレイスは黙り込んでいる。
後ろを歩いているので表情を確認できないが不思議そうな顔をしているに違いない。
「暗くて見えないでしょ?」
「うん。見えない欲しいかも」
壁に手を付いて階段を下りていたレイスが立ち止り、シュタも立ち止まる。
それに気づいた自分ももちろん止まり、上にいる彼らに向き直る。
「シュタ、ランプは出すなよ。暗視だ」
「分かってるよ」
「え、そうなの?」
「当たり前、ランプなんて持って歩いてたら邪魔でしょ?」
「そっかー」
「ん、目閉じて」
レイスが目を閉じるとシュタはその上に手を軽く添えた。
それはすぐに終り、手をどけるとすぐにそう尋ねるシュタ
「どう?」
「お、見える見える」
「相変わらず」
おれの言葉にシュタが軽く睨んでくる。褒めたつもりで言ったのだが
上手くは伝わらなかったらしい。
「アキは何でいらないんだ?」
「慣れだよ。あとは体質?元々夜目が効く方だから」
「あら、便利そう」
「別に」
階段は思ったよりも長く、中々下にたどり着かない。
まっすぐ伸びているようにも感じるが、わずかにカーブを描いているらしいそれはどこにむかっているのかはわからない。
それでも終わりは必ずやってくるもので、少しだが空気の変化読み取れた。
それと同時に声が響く。
「寒っ」
静寂に包まれた空間をレイスの声が場違いに明るい空間を作り上げる。
「確かにね」
それに短く答えるシュタ。
「コレって地下だから?それとも?」
「両方だろう?」
最後まで言わないレイスの言葉は考えなくとも良くわかる。
「うげ」
簡単に返せば彼は嫌な声を洩らす。
「何?」
不審に思い問いかけると、彼の声は心底嫌だと訴える。
「だって、相手に近づけば近づくほど気温が下がるってことだろ?」
「いや、そうとも言えない」
「そうなの?」
「まあ、相手がそういった輩なら話は別だが」
「そうじゃない事を祈る」
真剣なレイスの声にシュタが楽しそうに問いかける。
「レイス、寒いの嫌いだっけ?」
「嫌いとかいう問題じゃないし」
ムッとしたようにレイスが返すとそれに笑いを零すシュタ。
とてもじゃないが緊張とは無縁だ。
「慣れれば問題ない」
PR