「ここはどこだ?」
「え?」
「ここは、仮にも王国の管理…というよりは保護だな。保護下にある学園だ。そんな場所に簡単にモンスターが入り込めるか?答えは簡単だ。なあ?」
「もちろん、入り込める訳がないだろ」
シュタに問いかけると、彼は苛立ち紛れに答える。
「しかし、何かがいるのは確かだ。今、お前もそう言った。だったら考えられるのは一つだ。王国を敵に回しても問題ない。むしろ、敵対している人間がなんらかの方法を使って送り込んだ。そう考えるのが妥当だろう?」
「確かに」
「これくらいは簡単に想像がつく。それに、俺のはただのカンじゃない。経験による論理的予想だよ」
「そう言われると…いや、待て」
自信たっぷりに言い放つ俺の勢いに頷きかけたシュタが慌てて言い加えるが、それを待つことはせずに自分の言いたいことを言う。
「信じる、信じないは任せる。好きにしたらいい」
「…でもなんで、この学園に?」
不適に笑って見せた俺を見て、瞬間眉間に皺を寄せるが諦めたらしい。会話を進める事を選んだシュタにわざとらしく真剣な顔でこう答えた。
「それが分からない」
「…でも、理由が無ければこんな事しないよね。…面白い」
ため息を一つついて、くすりと笑いながらシュタはそんなことを言う。
「シュタルク?」
「隠してること全部吐かせてやる」
「気にするな、レイス。やっと真剣にやる気になってくれたんだ、嬉しいかぎりじゃないか」
多分、大地の棟があるであろう方向を睨みつけながらシュタが言い捨てる。それを見て、やや恐怖を覚えたレイスに言葉を掛けるが彼は納得いっていない。
「やっとって、今までは?」
「適当に流してたじゃないか」
「そうなの?」
「シュタの悪い癖だ。真面目にやっている様に見せるのが上手いんだよ」
「それが分かるアキもすごいよね。どこで見分けてるのか僕が知りたいくらいだよ」
「目を見れば分かるだろ」
そんな言葉を聞いて、レイスがシュタの顔をジッと見つめるがシュタは慌てて目を逸らす。
しかし、レイスは諦めない。目を逸らされてもわざわざ移動してまで目を合わせようとしている。
「レイス、だからって見れば分かるもんじゃない。無闇に目を合わせるな」
「良いじゃないか、減るもんじゃないし」
「レイス、そんな楽しそうに言わないでよ。アキ、見てないでレイスを止めてくれない?」
「勝手にやってろ」
さっさと彼らを見捨て、自分の作業に戻る。
準備が出来なければ敵を倒すも何もあったものでない。
「レイス、遊んでないで準備しようじゃないか。じゃないと後でアキに怒られる」
「ああ、そうか。でもシュタルク、準備って何を?」
「さあ?僕は基本的に何も要らない。この身一つあれば大抵の事はできるからね」
「そっか、シュタルクは魔法専門だもんなぁ。つーか、おれ行って意味あんの?まあ、来るなって言われても面白そうだからついていくけど」
「レイスのその考え方って変だよね。普通は行くの止めるって言うよ?」
二人の会話を聞き流しながらも己の手元に集中する。
「人生楽しんだもん勝ちだろ?だったら、自分のやりたいよーに生きるのが一番」
「なるほどね。それには僕も同感」
「そっからすると、アキは窮屈な生き方してるよな~」
「確かに、時々不憫に思うくらいにね」
「アキって何をしているときが楽しいんだ?」
「さあ?人生そのものがつまらないって顔をしている気がするけど」
それでも至近距離で話す彼らの声は自然と耳に入ってきてします。
集中力がないと言われればそれまでだが、この言われようはないだろう。
「あ、わかる!そんなんで、意味あ」
ぱちん!
軽い、乾いた破裂音がレイスの言葉を止める。
「アキ、シェ?」
「アキ?」
ゆっくりと振り返った俺に二人は不思議そうな顔をする。
「何か失敗した?」
シュタの問いに大きく頷いてみせた。
「何?」
レイスが心配そうに尋ねてくる。
「人生の選択」
「は?」
まるで理解できないとレイスの声。シュタは不信な顔で俺を見ている。
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