「明日天気にな~れ」
傘の向こうを見上げながら
小さくつぶやく
独り言
雨が地面をたたく音
水浸しの道路を車が走る音
前をじゃれ合いながら
歩く小学生の声
何でもない日常に
僕の声は溶け込んでゆく
意味もなく感じる
この寂しさを何と呼ぼうか
雑音まみれの
街の中
本当に聴きたい音をみつけようと
耳を澄ましてみるけど
それはみつからない
「だから雨は嫌いなんだ」
すっと消えゆく
自分の声
僕も消えてしまえばいい
傘を握りしめ
唇引き結ぶ
眉間に寄る皺は
もうずっと消えてない
誰かが言ってた注意報
どうやったって
避けられないなら
そんなもの必要ない
中途半端に知るよりは
知らない方がずっといい
何も知らなかったで
済まされる
「もう…いいや」
涙を流すときは
誰かの隣がいい
コンビニの横で
立ち止まり
店内を窺う
明るい光に包まれて
ただ眩しいだけだった
コンビニの傘立てに
自分の傘をつっ立て
走り出す
雨は止まない
雨音がすべての存在を
希薄にする
濡れる髪が纏わりついて
乱れる息が
嫌でも自身の存在を
主張する
生きているっていう事実だけで
他に何がいるんだ?
何に迷ってる?
何に悩んでる?
周りなんて関係ない
雨が降ろうが
雷が鳴ろうが
風が吹こうが
陽が出ようが
沈もうが
僕はここにいる
すれ違う人が
僕を見て振り返る
大丈夫
僕は
ここにいる
今は
それだけでいい
H20,10,27
cel