参。
その静かな声音は少し怖い。
「だから、かなたに会わせたかったんだ」
「・・・?俺を会わせたかったのか?それとも、あの爺さんに会わせたかったのか?」
僕の言葉に彼は、思い切り変な顔をする。
「ごめん、何言ってるのか分からない」
「だから、あの爺さんに俺を紹介したかったのか、俺にあの爺さんを紹介したかったのか、どっちだって聞いてるんだ?」
「どっちも一緒じゃん」
「全然違う」
「ん~、そうだな。爺さんにかなたを紹介したかったんだ。友達はいないのかって毎年のように聞かれてたから。安心させたかったって感じで」
「・・・・いつから、ここに来てるんだ?」
「来始めたのは・・・10年以上は前じゃない?爺さんと喋るようになったのはここ数年の話」
塔婆を持って歩く彼の後を追って階段をあがる。
途中、何箇所か寄って、軽く掃除をし塔婆を立て、線香をあげてきた
残るはあと一箇所らしいのだが、それが一番上になるらしい。
「本当は、色々お供えできればいいんだけど、さすがにそこまで金が回らない」
墓の前で手を合わせながら、彼はそんな事を漏らしていた。
墓に刻まれていたどの名が彼の友人だったのだろうか?
僕はそんな事を考える。
ようやく、一番上に着いたころには、汗だくになっていた。
周りにも殆ど人がいないので、僕らが一番後なのだろう。
「ここからの眺めがいいだろう?」
そう言って、彼は遠くを指差す。
その先には、積乱雲をバックにひときわ高い建物といくつかの特徴的な建物が見えた。
「もしかしたら、花火が見えるのかもなぁ」
「さすがにここでは見たいとは思わないぞ」
「確かに」
何も考えずに発言したらしい彼は珍しく苦笑している。
「帰ったら、花火でもするか?夕飯の買出しついでにスーパーで花火買って」
「お、いいね」
そんな彼を見ていられなくて、僕は花火を提案する。
夕飯は薬味たっぷりのそうめんと天ぷらを揚げようか。
デザートにはスイカを切ろう。
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