「お前らと出会ってしまったという、俺の人生の選択を間違えた」
「アキ何…」
「お前らいい加減にしろよ?」
シュタの言葉を遮り、俺は二人を交互に見て言葉を発する。
「訳の分からない事を喋ってる暇があるなら、頭を動かせ。シュタ、自分の身一つで、何の準備もいらないと言い張るなら、その大層な身をしっかり今のうちに休めとけ。つまり、寝ろ。レイス、何も分からないのは良く分かる。だがな、丸腰で行って良い訳ないだろ?剣の一つでも用意したらどうなんだ?それが終わったら、お前も寝ろ」
一気に喋り終わると、二人がどこか唖然とした表情で立ち尽くしている。
「聞いてたのか?」
「それは、もちろん」
俺の問いにシュタが答えるが、本当かどうかは怪しい。
「アキ?もしかして怒ってる?」
「だったら何だ?」
「あ、おれ、部屋帰って準備してくるよ!じゃあ、二人とも後で!」
微妙な空気をいち早く察したレイスが半ば勢いに任せ部屋を出て行く。その後姿を睨みつけたシュタが呟いた言葉を俺はしっかりと聞いていた。
「逃げるなんてずるい」
しかし、気にしている場合ではない。自分にはやっておくべきことがまだまだあるのだ。
放って置いたことが良かったのか、意味もなく立ち尽くしていたシュタが自分の部屋へと歩き出す。
「キミの言った通り少し寝るよ」
「ああ、分かった」
「キミも、寝るべきだと僕は思うけど?」
「分かってる」
「…お休み」
「ああ」
本音を言えば今すぐにでも寝たい。しかし、そうもいかないのが現状だ。
最低限の準備をしたら寝よう。そう自分に言い聞かせて手元の作業に集中した。
PR