「さあ、知らないよ」
「あいつが寝過ごすのはいつもの事か…」
「寮長が務まってるのが不思議だよね」
ちらりとドアの方に一度だけ視線を送り、シュタに戻す。
「確かに、遅刻が原因で授業単位落としたぐらいだからな」
「それさえなければ僕らと卒業も可能だったのに、もったいない」
「例えできてもあいつはしないだろ?そうゆうやつだ」
「確かにね。おはようレイス。気分はいかが?」
「ちゃんと寝れたか?」
二人して、いないはずの第三者―レイスに話しかける。
「…ばればれって訳ね。二人とも時々意地が悪いよね」
「そう何度もやられてたまるか」
部屋の中にできた暗闇の中から落胆したレイスが姿を現すと、シュタがわずかに驚いた表情をしてるのが目に入る。
「安心しろ、シュタには十分通用している」
「え?」
「さて、いい加減出かけよう。約束の時間が過ぎる」
「アキ、一人で話を進めないでくれる?」
「これ以上、くだらない意地の張り合いをしていたって意味がない」
「待った、待った。シュタには通じてたって?」
「いるのはわかっていたけど?」
「いるのは、だろう。行こう」
一瞬表情を落としたシュタだが、すぐに視線をこちらに向けてくる。
「何だ?」
目があったので問いかけるが、彼は何も言葉を発さない。
ただ無表情でいるだけだ。
「行くんでしょう?」
やがて視線を外し、すぐ横を通り過ぎならそんなことを言う。
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