そのまま3人とも、言葉を発することなく進む。
無言でいる理由はとくにない。自分は何も考えずに歩いていた。
そんな事は良くあることで無心で歩くのが結構好きだったりする。
他の2人がそんな風に歩くとは思えないので、何か考えていたのかもしれないがその中身は想像もつかない。
そのまま、少し歩けば大地の棟がすぐに見えてきた。先ほど見た姿とは何も変わっていない。
当たり前だが、ほんの少しだけ安堵する自分がいる。
そんな自分を余所に場にそぐわぬ楽しそうな声。
「なんか楽しくなってきたかも」
「え?」
自然と建物を見上げていた自分の横でレイスがそんなことを言い出した。
「だって、オレこんな事初だし」
ニヤリと笑いながら授業でもなかったろ?と問うてくる姿は確かに楽しそうだ。
「ふーん、レイスらしいね」
「そうゆうお前こそ楽しそうだけど?」
同じように横に並んだシュタ。彼の存在で初めて自分が立ち止っていたことに気づく。
「そう?」
関心無さそうに言うシュタに視線を向けると、彼は軽くとぼけてみせた。
「アキは楽しくないのか?」
不思議そうにレイスに聞かれ、答えに迷う。
正直、こんなこと楽しいか楽しくないかで括ることではない。
しかし、この3人で何かするのは初めてなので、いつもの仕事とはちがう気持ちが付きまとう。
そして、思っている以上に緊張している自分がいることも確かだ。
普段の仕事とは雰囲気が違いすぎる。
「別に」
ぐるぐると頭の中を巡る言葉を切り捨て、結果的に短くそう答えてさっさと建物内に向かっていく。
「も~素直じゃないんだからー」
「アキが素直でも怖いけどねー」
背後の会話で思わず足を止めそうになるが、ここで足を止めては負けだと言い聞かせる。
あれは態とだ。
もしかして、緊張していることがバレているのだろうか?
そんな事が頭をよぎるが、そんな事はどうでもいい。
長年の付き合いなので、隠せないことだが多くあるのは嫌な事実だ。
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