さくらの便り 8
「分かった、納得した
そこまで考え付かなかったおれがバカだった。
ってことでさっさと行こう」
二人の話を聞いて
一番何も考えていないのは自分だと気が付いた。
余計な事ばかり考えている場合ではない。
そもそも、なんでこんなところにいるのかというと
おれが持ってきた桜のハガキから始まっているのた。
持ってきた張本人がこれでは情けない。
「ソウ、こっち」
「え?」
二人を置いて歩き始めたおれに意外な声がかかる。
追い抜いた二人を振り返れば、シンが自分の進行方向とは
全く違う方向を指差している。
「ソウ、恥ずいな~」
笑いながら茶化すクギ。
シンはいつものあきれ顔。
情けない。
「こっちからも行けるんだ」
「だったら早よ言え」
小さく呟けばシンからもかすかな笑いが漏れる。
シンが言うこっちとは本堂の方だ。
上ってきた坂道を下らずに
本堂の前へと歩を進める。
道がないと思われたそこは
確かに通り抜ける事ができる。
「シン?」
そのまま真っ直ぐ行くのかと思うと彼は何故か立ち止まる。
おれとクギ不思議そうに眺めるのを気にする素振りも見せずに彼は
そっとお辞儀をすると軽く手を合わせた。
予想もしなかった行動。
同い年のはずの彼がとても遠い存在に思える。
ほんの数秒だけ視線を落として何かを願ったシン。
「教育がよく行きとどいてます事」
「別に、祖母の影響だ」
クギが感心しながらもシンを茶化す。
シンはそれを軽くあしらい何事もなかったように歩き始めた。
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