さくらの便り 9
「墓、少なくね?」
水道の前を通り過ぎるとすぐに
御墓がいくつか見える。
歩いている所よりも
いくらか高くなったその場所には
数えられるほどしか御墓が存在しなかった。
「上」
クギの言葉に対してシンの一言。
彼の言葉通りさらに上が存在した。
先ほどのぼった坂道よりもきつそうなその上に。
一応とばかりに階段が横についているが
歪なものなので上り辛いこと間違いなしなので
自然と足は坂道を選ぶ。
「なんつーか。
お年寄りと小さい子には不親切な墓だな」
クギがボヤキながらも坂をあがる。
おれは無言だ。
短い坂道なのにどっと疲れる。
この寺はおれ等にいったい何を求めてるんだ。
坂道を登りきれば確かにそこにはいくつもの墓が存在する。
しかしもっと気になるものが眼前にはあった。
「シンくーん。もしかしなくても
この上にもあるんですかー?」
呆れ混じりの抗議の声。
そう、さらに上があるのだ。
しかも、今度は階段のみ。
「安心しろ、あれが天辺。そっから先は下るだけだ」
「オレこんな体力求められる墓には眠りたくないな」
「死んだ後は関係なくね?」
クギの言葉に思わずツッコミを入れるおれ。
「残された遺族にそこまで迷惑かけたくないし
嫌がられたくないって話」
「あ、なるほど。
死んでまでウザいとかちょっとヤダな」
「あれ?ソウくん。
それはオレが生前ウザったいっていう設定の上で?」
「違いましたっけ?」
周りにある墓をきょろきょろと見ながら
クギとフザケタ会話を交わす。
基本的に彼に言葉でかなう事はないが
時々強気に出たいと思う時がある。
「安心しろ。お前ら二人究極にウザいから」
前を歩いていたシンが立ち止まり
振り返ったうえで力強く言いきった。
「「ですよね」」
異口同音のおれとクギ。
これがいつものパターン。
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