僕は、誕生日というものが嫌いだった。
年齢が一つ上になったからといって、すぐに考えが変わる訳でもないし、体が成長するわけでもない。これらは、毎日があれば変わってゆくことだ。
けれど、確かに年は増えてゆく。
年が増えるだけで後は何も無い。
誕生日なんてものは、あってもなくてもどっちでも良いと思う。
「おめでとう」と言われるのも好きじゃない。自分の中では嬉しくも無いことを、周りに喜ばれても余計に気分が落ち込むだけだ。
誕生日、それは僕を縛り付ける呪文のようだった。
僕は、高校一年の十五歳、今年で十六になる。十五歳から十六歳になるといっても何かがすぐに変わる訳じゃない。
今までどおりの僕だ。
そんなのは当たり前だ。
だから、誕生日を迎えたからといって何かが変わる訳じゃない。でも、僕は誕生日を迎えるのが嫌なんだ。
だってほら、極端な話をすると、十六というのは四捨五入すると二十になる。
それに、誕生日を迎えると一つ大人にならなければいけない気がして中途半端に気持ちがあせるんだ。
何を言っているか良く分からないというのは、自分でも分かっている。
けれど、時々言葉では言い表せないような、どうしょうもない不安に襲われる事は確かなんだ。
それに、僕は思う。
死に近づくための、カウントダウン―ではなく、アップだろうか?―なんかして何が楽しいんだ?
何も、誕生日を迎えるのが嫌なのは今年に限った事じゃない。
僕は大人になるのが嫌なんだ。
もっともっと子どもでいたいんだ。できることなら、永遠に子どもでいたい。
でも、そんなことは無理に決まってる。おとぎ話に出て来る夢の国じゃあるまいし。永遠に子どもでいることなんて絶対に無理なんだ。そんなこと、考えるだけ無駄な事。
しかし、僕は毎日そんなことばかり考えている。
物語の世界のように願っていればいつか奇跡が起こるのではないかと・・・。
そんな馬鹿なことばかり考えているんだ。もちろん、こんな事は誰にも話したこと無いし、話したいとも思わない。当たり前だ、こんな事話したってバカにされるだけで、いい事なんか何も無い。
けれど、なんとなく、本当になんとなく話してみたくなって、一番仲の良い友達にそれとなく話してみたことがある。
それも、かなり最近の話だ。
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